相場展望~地政学でのTPP
平成26年5月22日号(相場展望~地政学でのTPP)
イギリスの政治家であり地理学者であったハルフォード・マッキンダーは7つの海を支配したイギリスの権益を守るには如何なる戦略をとるべきかを『ハートランド論』で展開しました。大陸国家が外洋に出て権益の拡大を計ろうとすれば、海洋国家はそれを封じ込めようとして紛争が起きるとしています。マッキンダーが意識した国はドイツやロシアでした。東欧を支配する国がハートランド(ユーラシア中軸地帯)を支配し、ハートランドを支配するものが世界島を支配するとしました。マッキンダーはウクライナのオデッサに高等弁務官として2年間駐在しています。今日のウクライナ問題の元はマッキンダーの時代の地政学まで溯るとより理解できます。
マッキンダーの理論はオランダ系アメリカ人であるニコラス・スパイクマンに受け継がれ、『リムランド論』として発展します。スパイクマンによれば、アメリカは巨大な半島国家であり、海洋国家に分類されます。イギリスに代わり、覇権国家となったアメリカがとるべき戦略は、ハートランドの侵入ルートであるリムランドの主要な国々とアメリカが同盟を結ぶこと、リムランド諸国間のアメリカ抜きの同盟をバラバラに切断するが、同時のハートランドの国にリムランドの国々を支配させない事です。日本や韓国・中国はリムランドの国々に分類されますので、アメリカ抜きの同盟など許されませんし、尖閣・竹島で対立させ、靖国参拝・従軍慰安婦問題をたきつけて分断を計ります。
リムランド論を理解すれば、APECにアメリカがしゃしゃり出て参加をしたがるか、2005年にシンガポール・ブルネイ・チリ・ニュージランドのたった4ケ国の経済連携協定にすぎなったものをオーストラリア・ベトナム・マレーシア・ペルーを巻き込みアメリカが突如として主導権を握ろうとしたかが、わかります。ハートランドの国とはまさにロシアであり、東欧であるチェコやポーランドにアメリカが対ロシアを意識したミサイル基地を作るのも地政学にそった行動です。ウクライナでのロシアの毅然とした行動をみる限り、永年のハートランド封じ込め策にかかわらず、大陸国家が巻き返して、海洋国家が手を出さなくなったとわかります。ウクライナ問題が次のステージとなる時、海洋国家の本気度がわかります。