相場展望~NY原油連動・6月2日号
シェールガスの発見によりアメリカは世界一の産油国となりました。多くの企業や個人がシェールガスに群がりました。アメリカの独立系の関連上場企業は20もあります。WTIを産出するテキサス州に主要鉱区が多く、イーグルフォード・バーネット・パーミアン・ヘイズンビルなどか有名です。ニューヨーク州に近いマーセラスなどもあり、ロッキー山脈以東には無数の鉱区が点在します。採掘コストは20$以下の所もあれば、60$を越えるところもあり、原油安の打撃は異なります。石油メジャーもシェールガス鉱区買収を拡げましたが、エクソンの純利益63%マイナス、シェブロンは2四半期連続赤字という具合です。規模が小さい所は厳しく、コンネンタル・リソーシーズ原油5$下がるごとに2億$の現金収入が減ります。採掘に関係しない精製などの会社を加えると140社もあります。2015年に破たんした関連企業は42社、原油安が続くと140社のうち3割は1年以内に手元資金がなくなります。
日本株はドル円相場に連動しますが、基軸通貨ドルをもつアメリカの相場はいつしか原油に連動するようになりました。アメリカの原油戦略は歪んでいます。米国が対ロシア戦略として、ロシアの主要輸出産品である原油下落を促しています。アメリカ大統領よりも強い権力を持つのがNSS(国家安全保障戦略)やNDS(国家防衛戦略)がそれを求めているからです。もう一つ原油相場を上がりにくくしているのはイスラムの宗派争いと原油価格の決定権を巡る覇権争いです。サウジアラビアを盟主とするスンニ派連合と、ロシアが後ろ盾になっているイランのシーア派連合による世界最大の産油地域である中東の覇権、ならびに原油価格の決定権を巡る熾烈な争いです。
アメリカの原油安戦略によって、かつて良好だったサウジとの関係はギクシャクするようになりました。サルマン国王はオバマを出迎えませんでした。サウジ訪問前にサウジの株式換金売りを出させないように、二つの提案が出されました。一つはJPモルガン・HSBC・三菱UFJなどの共同融資で1兆円融資するというものでそのお金を使ってロシア製の弾道ミサイルシステムを購入しないと条件つきでした。もう一つはサウジ・アラムコを上場させ、2兆$の政府系ファンドを作らせるというものです。産油国の売りはアブダビ90兆円・カタール40兆円とまだ残りますが、少なくともサウジの売りを防ぎたいというアメリカの思惑が見えます。