相場展望~砂上の楼閣・2月18日号

相場展望~砂上の楼閣・2月18日号

井上靖氏の小説に『敦煌』と『楼蘭』があります。共にシルクロードの要衝であり、仏教文化の最高峰の地でもあります。中国の漢や唐と辺境民族の匈奴や西夏の板挟みにあいながら巧みに生き抜いた国家です。中国は100年の歴史も粗末にする国家ですが、この両国には4000年の歴史があります。今はウィグル自治区として嫌がらせに核実験場にされています。両国の遺跡・遺物は多数略奪されましたが、その価値は計り知れません。かつて栄えた砂漠のオアシスが廃れてしまった原因は、周辺森林を燃料にする砂漠化現象です。オアシスも木が水を蓄えている原理を忘れればなくなります。北京の近郊の森林は伐採され、燃料にされ、また地下水も汲み上げすぎて枯渇しつつあります。中国もいずれ滅びる運命にあります。

砂上の楼閣と言われながら50年近くも繁栄を続けてきたのが中東産油国です。繁栄を予想以上に長引かせたのは、イスラエルの存在です。中東に突如建国された異物国家はアラブ社会との軋轢を生じ、その争いに乗じて、石油メジャーが権益を拡げていきました。石油価格の価値を著しく高め、採掘拡大にも協力した結果、アラビアンナイトを作り上げました。金の使い方がわからない元部族長たちは風呂や便器まで金無垢にしました。

最近のオイルマネーの萎縮・凋落ぶりは半端でありません。サウジアラビア一国が今なお保有する株式資産だけで70兆円、財布が苦しくなるとそれらを切り売りして先進国株価の下落要因となります。財布が心配になってきたサウジは欧米の入れ知恵でサウジアラムコを上場させます。GSが中国の不良債権だらけの四大銀行・中国工商銀行・建設銀行・農業銀行・中国銀行を上場させたと同じ手口です。サウジだけでなく、アブダビの持つ株式資産は90兆円、カタールは40兆円、これらは石油価格低迷が続けば売ってきます。中東の石油での繁栄がなくなれば、文字通り、砂上の楼閣になります。後100年後の世界は知る由もありませんが、ドバイはその象徴になっていましょう。

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