相場展望~原油安戦略・1月21日号
アメリカ大統領は外交政策を決める事ができません。補佐官が主導権をよく握りますが、それよりも強い権力を持つのがNSS(国家安全保障戦略)やNDS(国家防衛戦略)です。ここの決定はいわば、アメリカを牛耳る奥の院の決定みたいなものです。今、アメリカが注意を払っている国はロシアが筆頭・ついで中国・イラン・北朝鮮の順です。ブッシュ前大統領はイラン・イラク・北朝鮮・アフガニスタン・リビアをならず者国家と言い、中国に対しては監視を要する国としていました。それがブレジンスキーとかキッシンジャーという親中勢力のアドバイスを聞くようになってからは、オバマは第一期は協力と懸念、第二期は協力、第三期は協力と競争という具合に対中軟化姿勢か目立ちましたが、南シナ海埋め立て以降は、深刻な懸念というものに変化しました。アメリカは明らかに中国を敵対国とみなしたのです。すぐに戦争をせずに、かつてのソ連戦略のように、戦わずして勝つ戦略を次々と打ち出してきます。
バイロン・ウィーンはFRBの今年の利上げ回数を一般的な予測の4回ではなく、一度しかできないとしていますが、それは、世界経済の実態からみた常識的な結論です。利上げはアメリカの景気が回復してインフレになる前の抑制という面と、国家戦略による利上げというもう一つの側面があります。レーガン政権の時は高金利政策をとり、石油相場の押し下げを促しました。
それは当時ソ連が国家の収入の大半を石油などに依存していたからです。その結果、87年のブラックマンデーという副作用もありましたが、91年にはソ連が崩壊しました。現在のアメリカの利上げは明らかに、ロシアと中国を意識しています。レーガン時代と同じように、原油価格の下落を促していいます。米国内から石油輸出を認めたのも同じ意図です。中国に対しても利上げと原油価格低下は有効です。ドルベック制から脱せない中国にとって米国の利上げは、ドル高によるデフレ圧力となり、人民元安に誘導せざるを得ず、介入によって中国のドルの外貨準備額の低下を促します。また中国は石油確保の為に、ベネズエラ・スーダン・ナイジェリアへの膨大な投資行ってきましたが、それも大半が撤収に追い込まれています。戦わずして勝つ戦略がすでに実行されています。
サウジとイランの対立など、原油高要素もありますが、両国共に、石油収入に頼っており、自暴自棄にならない限り、ホルムズ海峡の閉鎖はありえず、少しでも多く原油を売り続けようとする訳であり、ロシアが奇策を打たない限り反転はありません。