相場展望~政策総動員

相場展望~政策総動員

平成26年11月6日号(相場展望~政策総動員)

130兆円と世界最大の年金運用をするGPIFは今まで8割を国内の債券と株式の運用をしていましたが、これを6割に落とす決定をしました。全運用の6割を占めていた日本国債の運用を減らし、国内株式と外国株式の運用比率をそれぞれ倍の25%にします。国外債券である米国債の運用比率も15%へと増額です。QE3を止めて国債などの資産買い入れを行わなくなる米国への援護射撃見え見えです。日本株式比率を増やすと共に海外株式比率(主として米国になる)を引き上げたのは、日本が援助しなければ、ブラックマンデーの再来になるとでも脅されたのでしょう。ジャパンハンドラーと言われるジョセフ・ナイやアーミテージの来日と深く関係がありそうです。

翌日に発表された日銀の政策決定会合の内容は常軌を逸した内容でした。長期国債の買い入れ額を現行の50兆円から80兆円に増やし、株式ETFの買い入れは30倍の3兆円に増額、REITの買いも3倍の900億です。米国が異常緩和策を終わらせようとしている時に行われた二つの決定の裏に潜む、もう一つの意図は消費税10%増税への布石と考えられます。株価が上がれば米国では消費が増えるのは、全資産43%が投信(12%)や株式(31%)で運用されているからですが、日本ではその比率は投信6%株式3%の都合9%にしかすぎません。株式ETFや年金で株を吊り上げても、米国ほどの消費増額効果はありません。

黒田PUT・黒田バズーガは13年4月以来のインパクトとなりました。為替は全通貨に対して円安に振れ、日経平均はたった一日で875円の上昇となりました。これまでの円安によって9月の消費者物価は3%上昇となりましたが、消費増税の影響で消費支出は5.6%の減少となりました。企業の多くも生産拠点を海外に移しているので、円安の恩恵はほとんどありません。皆が望まない円安を演出するのは、米国債投資への資金傾斜を促す為であり、その見返りとしてウォール街の株価プログラムに日本株ないし日経先物買いを促し、株高を現出する事にあります。経世済民、すなわち、世をおさめ、民を救う真逆の政策は、安倍ノミクスの意図せざるもののはずです。財務省の財政均衡主義と米国の圧力が日本を再度の苦境に陥れる事となりましょう。

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