相場展望~高速取引
平成26年5月2日号(相場展望~高速取引)
チェスは盤面8×8の64桝、将棋と違って取った駒は使えません。将棋の飛車と同じ働きのルーク、角と同じ働きのビショップ、8方に飛べる桂馬のナイト、飛車と角の両方の働きがあるクィーン、王と同じキング、そして歩とほぼ同じポーンの6種の駒から成り立ちます。将棋は9×9の81桝です。コンピュータープログラムで、将棋の名人やチェスの名人に相当するグランドマスターに勝つのは長らくの夢でした。小林秀雄の論説のメルツェルの将棋指しなるものがありますが、無敵のチェスロボットの中にはトルコのチェス名人が入っていました。チェスのコンピューターロボットはこの論説の70年も後の1912年に最初に考案されました。以後、チェスの世界チャンピョンのカスパロフにコンピューターが勝つのは1997年まで待たねばなりませんでした。
チェスより複雑な将棋のコンピュータープログラムがプロ棋士に勝てたのは2013年で、2014年の今年も4勝1敗となりました。コンピューターのプログラムの進歩は目をみはるものがあり、詰み筋が生じた時は勝つのは不可能です。21手であっても51手であっても数秒に詰み上げてしまうからです。
株式の世界でも、1秒間に4回の注文が出せるように、発注スピードが桁違いでほぼ無敵の存在となっています。ブラックマンデーはコンピューターのプログラム売買の欠陥がもたらした悲劇でしたが、修正プログラムによって欠陥がかなり補われるようになりました。アメリカの大手高速取引会社、ヴァーチェ・フィナンシャルは上場を目指していますが、その目論見書の中で1238日で、損を出したのはたった1日としています。一種のインサイダー取引まがいであり、高速取引の是非を巡る議論がされるようになりました。アメリカで人気の報道番組、60ミニッツにおいて、高速取引を書いたフラッシュ・ボーイズという本がベストセラーになった事が取り上げられ、その中で著者がNY株式は操作されていると表現した部分がクローズアップされました。
リーマンショック後、月足の二段下げが一度も起きない不自然なNYダウは、株価PKOチームが高速取引を利用した巧妙な取引をしていると私は何度も指摘してきましたが、今頃になってアメリカ国内で取り上げられた事の方が不思議です。4月に入ってから、NYダウの上昇基調に異変が生じたのは、政府による高速取引PKOへの批判が出て、PKOを一時、しにくくなった事が一番の要因です。